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メタボを運動でぶっ飛ばそう!

メタボを運動でぶっとばそう!

 メタボとは、メタボリック症候群(英 metabolic syndrome、代謝症候群)の通称・略称で、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2つ以上を合併した状態をいいます。以前成人病とか、生活習慣病とか言っていたものと共通した概念なんですが、マスコミがメタボ・メタボと連呼したせいか、かなりポピュラーな言葉となっています。たとえば、メタボな人とか、メタボ対策とか・・・

私も腹囲がゆうに95cmもあり、他人事ではありません。では、メタボがなぜ問題になるのでしょうか。それは、無対策で放置すると、どんどん悪化して、脳や心臓や腎臓なのどの重要臓器の血管が痛むため、脳卒中や心筋梗塞などの事件が起きやすくなり、寿命にも影響が出てくるからです。

高血糖・高血圧・高脂血症、さらに高尿酸血症などはいずれも、治療の対象になるのですが、メタボでは、どれか1つだけでなくて2つとか3つとか合併しているのが特徴です。何か共通の異常が隠れていることを感じさせます。

普段、メタボ診療を行っていて感じるのは、皆さん、とにかく動かない!という印象です。それから、ほとんどの方が早食いです。あと、女性では、食べないのに痩せない!とか、私は体温が低いんですとかおっしゃる方が多い。

ゆっくり食べるのは、とても大事です。昔は、早く食事を済ませることは、美徳だったのですが、今は違います。早く食事すると、急激に血糖が上がり、高血糖の人にとって障りますし、肝臓にも良くない。メタボを悪化させ、国民総医療費が増えかねません。かつて、早食いが美徳だったのは、食べたあと、猛烈に体を動かして働かないといけなかったからです。今は、急いでかっこんだあと、猛烈に忙しくてもデスクワークだったりすることが多く、確実にあなたのメタボは増悪します。

食べたあと、1時間くらいして消化が進んだら、血糖が上がりますが、そこで体を動かすべきです。つまり、上がった血糖を筋肉運動で使ってしまう!のがいいのです。
寝る前に沢山食べるのも問題です。ゆっくり食べることも大事ですし、食べたら動く!ということが大事です。食べたあと、安静とか寝ちゃうとかすると・・・上がった血糖は、運動で消費されないので、脂肪としてどんどん蓄積されることになります。脂肪細胞に脂肪が蓄積されると、メタボを悪化させるサイトカインという悪玉物質が分泌されます。恐ろしいですね。食べたら動く!です。

血糖が体の細胞に取り込まれるには、インスリンの力が必要なのですが、メタボな状態では、インスリンの効き目が低化していることが多いのです。これをインスリン抵抗性といます。インスリンは、すい臓を鞭打って、むしろ沢山分泌されて高インスリン血症の状態になっていることもあります。このままほっておくと、すい臓が疲れ果てて糖尿病が悪化してしまいます。

筋肉運動は、インスリンの働きがなくても、血糖を筋細胞に取り込むことができます。筋運動により、GLUT4という糖の取り入れ装置が筋細胞の表面に近づくために筋肉の糖消費が増えるといわれています。しかも、この運動の効果は、48時間も続き、寝ている間も有効なわけです。さらに、運動を習慣づけることにより、GLUT4の量が増えるので、ますます筋運動で血糖を吸収しやすくなります。

普段、糖尿病の診療をやっていて感じるのは、よく運動する人の検査成績が抜群に良い!ということです。残念ながら、膝の痛みなどで運動が出来ない方や、”億劫で運動したくない”方の検査成績はよくありません。

運動すると、糖の利用がスムーズになって熱とエネルギーを産生しますので基礎代謝が亢進して、平均体温が上がります。体温があがると、活発になるだけでなく、免疫の力も改善し、病気になりにくくなります。また、寝ている間にもエネルギーを消費しますので、太りにくくなるわけです。

食べないのに太って困る、私は体温が低い、運動はかったるい、ケーキは好き、巷のナンタラダイエットは皆試したが、リバウンドでかえって太ってしまう・・・こういう貴方、まさにメタボへの1本道を歩んでおられます。空腹で我慢するダイエットは、省エネ体質を作ります。少ないカロリーで耐えるとは、飢餓状態そのものです。飢餓状態で活動することは能率が悪いですし、ミスも増えます。体は体温をさげてエネルギーを浪費しないように調節にかかります。つまり、痩せにくくなります。食べないのに痩せないというのは、こういうメカニズムです。

やはり、三食きちんと食べる。とくに、活動前の朝食と昼食はしっかりとり、なるべく充分に体を動かしてエネルギーを使ってしまい、蓄積に回さない。夕食は、睡眠(安静)が控えているのでむしろ軽くとり、寝ている間に脂肪として蓄積しないようにしたいものです。

(心臓が弱い方や、重度の糖尿病ではかえって運動がよくない場合もありますので、運動療法を始める場合は、一応医師に相談する必要があります)